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あしあと

    都名所図会に描かれた薪村

    • [2024年1月18日]
    • ID:16815

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     京田辺市史編さんの一環として、IT市史に取り組んでおり、京田辺の歴史や文化などをインターネット上で紹介しています。ここでは江戸時代の『都名所図会』に描かれた薪村について説明します。

    『都名所図会』とは?

     江戸時代後期の天明6年(1786)に刊行された『都名所図会』は、山城国全域を描いた地誌で、文章と挿絵で名所を紹介する江戸時代のガイドブックと言えます。昔の様子を知る手掛かりとして、また、現在と見比べてその違いを楽しむのも面白いと思います。薪酬恩庵・天神森・天神宮の図会には、酬恩庵(一休寺)・薪神社・棚倉孫神社や普賢寺辺りまで描かれています。

    『都名所図会』(市所蔵)

    一休禅師と酬恩庵

     一休禅師が晩年暮らしたことから、「一休寺」と呼ばれている薪の酬恩庵は、大応国師が禅の道場として建てた妙勝寺が始まりです。一休禅師が尊敬していた大応国師の建てた妙勝寺は兵火で焼け、荒れ果てた姿を目の当たりにした一休禅師は、復興を決意し27年かけて完成させました。大応国師の恩に酬いるということから、酬恩庵と名づけられました。開山堂には、大応国師の像が安置されています。

     一休禅師は文明13年(1481)に88歳で亡くなりましたが、その前年には自らの墓(滋揚塔・じようとう)を酬恩庵内に造りました。一休禅師の死後再び寺は荒れましたが、加賀藩主の前田利常が「大坂の陣」で戦いに行く途中、酬恩庵に立ち寄り、この戦いに勝てば修復することを約束し、現在残る方丈・庫裏・浴室・鐘楼・東司(とうす・便所のこと)などの建物が再興されました。これらの建物は、江戸時代の様式をよく残していることから、国の重要文化財に指定されています。

     酬恩庵は、盛期には薪里ノ内から薪山垣外にかけて36坊ほどあったとされています。山垣外にある通称ダイツボは、第一坊であったとも伝えられています。また、図会の中の六坊も塔頭(たっちゅう・建物のこと)の一つではないかと思われます。酬恩庵に残る江戸時代の絵図面などには10の塔頭の名が記されています。その一つに「黙々寺」があります。

    佐川田喜六昌俊と黙々寺跡

     『都名所図会』にも描かれている「不二山黙々寺」は、酬恩庵南東の山中にありました。淀藩主永井尚政の家老として仕えた佐川田喜六昌俊(1579~1643)は、歌人・茶人として松花堂昭乗や林羅山など多くの僧侶や文化人と交わった文武両道の人物です。酬恩庵の方丈庭園は、昌俊と松花堂昭乗・石川丈山の3人で合作した庭と言われています。

     寛永15年(1638)60歳で淀藩を致仕(ちし・退職のこと)し、薪の里に庵を結んだのが黙々寺です。昌俊の亡くなるまでの5年間歌や茶を愛し、ここで隠棲(いんせい)生活(隠居生活)を送りました。今では黙々寺は朽ち果ててしまっていますが、史料から江戸時代の終わり頃までは、建物はあったと思われます。黙々寺跡には「佐川田昌俊草創黙々寺旧跡」と刻まれた、三宅安兵衛遺志碑が建てられています。

     この黙々寺の建物があった上段には、高さ63cmの卵型をした自然石で「是什麽」(ぜじゅうま)と刻まれた昌俊の墓石や、昌俊以降の佐川田家一族の墓石9基が並んでいます。また、昌俊の墓石の後ろには、林羅山が撰文した高さ3ⅿ余りの亀趺(きふ)に乗る顕彰碑が建てられています。

    天神社と八幡社

     『都名所図会』には、奥社と八幡宮が描かれています。天神社は、現在の薪神社にあった奥社で、俗に奥の宮さんと呼ばれていました。天神社の南東150ⅿの所には、口の宮さんと言われていた八幡社(八幡宮)がありました。この二つの社は、明治40年(1907)に合祀され、現在の薪神社となりました。天神社の境内には光通寺がありましたが、明治初期の神仏分離令で無くなりました。また、八幡社は現在酬恩庵の所有地になっていますが、社殿の基壇跡が残っています。

    参考文献

    (1)薪区文化委員会(1989)『妙勝寺と酬恩庵 一休寺』
    (2)薪区文化委員会(1990)『薪の神社と宮寺 宮座』
    (3)薪誌刊行委員会(1991)『薪誌』
    (4)薪区文化委員会(2013)『没後370年佐川田喜六昌俊と黙々寺』

    作成:林正(京田辺市史編さん委員会委員 同文化財保護審議会副会長)

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