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あしあと

    一昔前の京田辺のくらし:おかげ踊り

    • [2021年4月1日]
    • ID:15908

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     京田辺市史編さんの一環として、IT市史に取り組んでおり、京田辺の歴史や文化などをインターネット上で紹介しています。ここでは、京田辺市が所蔵する歴史資料に描かれた京田辺の「おかげ踊り」について紹介します。

    生駒翠山が描いたおかげ踊り

     昭和初期から昭和39年に亡くなるまで京田辺に住んでいた画家の生駒翠山は、絵葉書におかげ踊りを踊る娘の姿を描いています。
    「何処で覚へて来ますか をわり屋節と踊を上手にやります 嬉しい時は一人できつとやります
    ヲカゲ ヲー ドー リーハ  ヨイト コリャ サッ 何の事 だかさつぱり 解りません 
    正月には長い袖の着物 を着て踊るのだといつて 馬鹿に御機嫌の態です 十二月 廿五日 翠山」

    昭和3年12月25日絵葉書表面(京田辺市蔵)

    絵葉書裏面

    「おかげ踊り」とは?

     江戸時代、「おかげ参り」と呼ばれる伊勢神宮へ集団で参拝する現象があり、式年遷宮をきっかけに60年周期で発生し大流行しました。おかげ参りに伴い、日本各地で民衆によって踊られたのがおかげ踊りです。幕末、おかげ参りの流行は終息していきましたが、慶応3年、空から伊勢神宮の御札が降ってくる現象が各地で発生しました。(御札は人為的に降らせていたという話もあります)

     江津村の庄屋の日記である「年中書留日記帳」(個人蔵)には、慶応3年の南山城各地の御札降りとおかげ踊りについて記されており、最初に御札降りが発生したのは、9月中旬~下旬の綴喜郡玉水宿周辺(現・井手町)でした。10月中旬には精華町域から京田辺市域江津へ踊り込みがあり、宮ノ口・水取・天神森・出垣内・江津・飯岡・山本・草内・東・多々羅・薪・大住では御札降りが発生しました。この御札降りがあると、村の人々は集って踊りの練習をし、近隣の村へ踊りに行くかけ踊りによって、おかげ踊りが伝わっていきました。

    京田辺でのおかげ踊り

     明治に入るとおかげ踊りは、主にお祝い事などのおめでたい場で踊られるようになります。田辺では、大正3年の天皇御大典で子供たちが祝いのために家々へ出向き、おかげ踊りを踊ったと伝えられています。戦前には、興戸の弘道高等小学校の校庭で、村の若い女性たちが、白い手拭いをかずき、赤い着物に赤だすき、赤いはな緒の草履をはいて踊ったといいます。昭和60年代には、お年寄りが演芸会で踊ったり、棟上げや嫁入り荷物を運ぶときなど祝いの場で、おかげ踊りの歌が歌われていました。

     御大典以降、徐々に踊る機会が少なくなり、現在、京田辺ではおかげ踊りはみられなくなりましたが、木津川市では、おかげ踊りが復元され、保存会によって伝承されています。

    おかげ踊りの歌

     京田辺には、さまざまなおかげ踊りの歌が伝えられています。

    「アー ヨーイサー おかげおどりは ヨイセコラセ 
    アー 誰が来て教(お)せた アーヨーイセ ハレワイセ
    アー 伊勢のな 大神宮さんが ヨーイトソラ 来て教せた
    ササヤートコセノ ヨーイヤナ ソレ アレワノサッサコレワノサッサ ササ ナンデモセー」 

    「おかげ踊りは ヨイセコリャセ 誰が来て 教せた 伊勢のな だいごさん ヨイそうや 来て教せた
    ささやとく せいのヨーイヤーナ アレワノ サッサ コレワノ サッサ ササ何でも せえ」

    「伊勢の大神宮様(さん) ヨイセコラセ 空からござる 私ゃナお蔭で オイソリャ 徳貰(もろ)た ササ
    ヤートコセーイノヨーイヤナ ハレハノ サッサ コレハノサッサ ササ ナンデモセ
    雪駄はくより草鞋をはきゃれ 足をナ軽くして 伊勢参り」

     一番最後の歌は松井に伝わるおかげ踊りの歌で、御札降りの様子がうたわれています。

    おわりに

     おかげ踊りは京田辺市のほか、城陽市、木津川市、和束町など南山城地方で広く伝わっており、祝いの場で踊りや歌が披露されていました。生駒翠山の描いたのは、昭和の御大典の後、まだおかげ踊りが伝承されていた時期の様子だったのではないでしょうか。

    参考文献

    (1)田辺町老人クラブ連合会編(1975)『田辺の昔ばなし』
    (2)京都府教育委員会編(1983)『京都府の民謡-民謡緊急調査報告書-』
    (3)田辺郷土史会編(1985)『筒城』第30輯
    (4)田辺町近代誌編さん委員会編(1987)『田辺町近代誌』京都府田辺町
    (5)田辺町民謡研究会編(1992)『ふるさと田辺の民謡 わらべ歌』
    (6)京都府立山城郷土資料館編(1996)『南山城の幕末維新』
    (7)中川博勝「南山城・京都への〈ええじゃないか〉の伝播」田村貞雄編(2010)『「ええじゃないか」の伝播』岩田書院
    (8)城陽おかげ踊りを広める会編(2020)『城陽おかげ踊りを広める会創立10周年記念誌』


    監修:村上忠喜 (京田辺市史編さん民俗・地理部会員 京都産業大学文化学部教授)

    作成:市史編さん室

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