ページの先頭です

共通メニューなどをスキップして本文へ

スマートフォン表示用の情報をスキップ

現在位置

あしあと

    一昔前の京田辺のくらし:茶摘み

    • [2020年5月22日]
    • ID:14820

    ソーシャルサイトへのリンクは別ウィンドウで開きます

     京田辺市史編さんの一環として、IT市史に取り組んでおり、京田辺の歴史や文化などをインターネット上で紹介しています。ここでは、京田辺市が所蔵する歴史資料に描かれた京田辺の茶摘みについて紹介します。

    生駒翠山が描いた茶摘み

     昭和初期から昭和39年に亡くなるまで京田辺に住んでいた画家の生駒翠山は、昭和4年5月、茶摘みを行う人々の様子を絵葉書に綴っています。絵には、紺絣に赤だすきをして、白手ぬぐいや笠を被った茶摘み帰りの人々が描かれています。

    「黄ろい月の昇る薄暮 何処の茶園からも五人十人の郡が 一勢に帰り路にかかります

    紺絣に赤だすき白手拭 新緑の薄月を背景として 馬鹿に調子のいいものです

    月見草が思ひ出したように ボウボウと咲きます 桐の花が 高く強烈な芳香を送つてます

    何処かで郭公が鳴きます 永い焦躁から抜け出て稍落ちつきをとり戻しました」


    昭和4年5月29日絵葉書表面(京田辺市蔵)

    昭和4年5月29日絵葉書裏面(京田辺市蔵)

    京田辺と茶

     京田辺と茶業の関わりは、江戸時代まで遡ることができるといいます。明治時代後半になると、農家で綿花・養蚕に替わって茶の栽培が行われるようになりました。第二次大戦中や高度経済成長期など、茶の栽培が減少する時期はあるものの、現在まで京田辺の産業として続けられています。とくに玉露は、日本でも有数の産地となっています。

    茶摘みとは?

     昭和4年頃、農家では、実を植えて茶の木を栽培するところからはじまり、雑草とりや害虫の駆除、肥料まきなどの作業を行いながら育て上げ、5月から6月にかけて茶摘みを行いました。お茶の歌で有名な「八十八夜」という言葉があります。八十八夜とは、立春から88日目のことであり、5月1日か2日が当てはまりますが、この時期になると、各地区で茶摘みが始まりました。

    茶摘み子さん

     茶摘みには多くの人手を必要とするため、かつては近隣の村々から「茶摘み子さん」と呼ばれる若い女性が集められました。村には世話人がおり、季節になると茶摘み子さんと農家の仲介を行いました。村の外に出る機会が少なかった時代、茶摘みは彼女らにとって社交の場でもありました。翠山の絵葉書には、こうした人々が描かれていたと考えられます。

     飯岡のある農家では、昭和30年代から平成初期まで、三重県や兵庫県など遠方から茶摘み子さんを呼んでいたそうです。期間中は20名ほどが集まり、農家に寝泊まりしながら、20日間ほど作業を行いました。こちらで働く女性たちは、60代から70代が多かったといいます。

    茶摘みをする女性(松村茂氏撮影・京田辺市蔵)  紺絣・赤だすき・白手ぬぐいを身に着けています。

    茶摘み歌

     京田辺には、さまざまな茶摘み歌が伝えられています。

    「ハアー 一番茶しまえば 二番茶も来いと 言うて別れた 人がある

     ハアー お茶をしまえば 早う帰れよと 言うて別れた 夫がある

     ハアー お茶を摘むなら 裾から摘まれ 上のずあえは 後で摘め

     ハアー 親の意見と 茄子の花と 千に一つの 仇もない

     ハアー お茶の本場は 宇治より田辺 味も香も 日本一

     ハアー お月様でも 夜遊びなさる 娘十八 無理もない」

     茶摘みでの出会いや別れのほか、地区の名物が歌われたものもあります。茶摘みは朝から夕方までのたいへんな作業でしたが、大勢でこうした茶摘み歌を口ずさみながら行われました。

    茶畑の風景

     京田辺では、現在も初夏には青々とした茶畑を目にすることができます。翠山は昭和4年のほかに、昭和5年にも茶摘みの風景を描いた絵葉書を出しています。昔も今も、京田辺で暮らす人にとって茶畑は身近な存在で、翠山も茶摘みをする人々を見て、新緑の季節の訪れを感じていたようです。

    参考文献

    (1)田宮尚武(1985)「ふるさと田辺の民謡」田辺郷土史会編『筒城』第30輯

    (2)田辺町近代誌編さん委員会編(1987)『田辺町近代誌』

    (3)社会科副読本編集検討委員会編(1989)『わたしたちの田辺町』

    (4)水山春男『南山西文化クラブ第四集 村の四季』

    (5)上杉和央編(2016)『京田辺市飯岡区調査報告書』


    監修:上杉和央(京田辺市史編さん民俗・地理部会長 京都府立大学文学部准教授)

    作成:市史編さん室

    お問い合わせ

    京田辺市役所市民部市史編さん室

    電話: 0774-64-1301

    ファックス: 0774-62-2519

    電話番号のかけ間違いにご注意ください!

    お問い合わせフォーム